Muse細胞の脊髄損傷への投与の基礎研究
Association of intravenous administration of human Muse cells with deficit amelioration in a rat model of spinal cord injury.
Kajitani T, Endo T, Iwabuchi N, Inoue T, Takahashi Y, Abe T, Niizuma K, Tominaga T.
J Neurosurg Spine. 2021 Jan PMID: 33385996
<Abstract>
脊損へのMuse細胞の静脈投与。SCI翌日に30万個のMuse細胞を静注したところ、運動機能・シスト形成・脊髄神経保持で良い結果が得られMuse細胞が脊髄に存在していた。効果はヒト由来細胞にダメージを及ぼすジフテリア毒素の投与で消すことが出来た。
<Figureの説明>
細胞投与によって運動機能が改善されるが、その後ジフテリア(ヒト細胞を死滅)を投与すると効果が無くなった。存在しているヒト由来の神経が死ぬことで症状が悪くなったと考えられ、ヒト由来の神経が機能を担っていたと考えられる。
<Introduction>
Muse細胞は間葉系幹細胞の一部の成分であるが、stage-specific embryonic antigen 3 (SSEA-3)という多分化マーカーを持っていながら腫瘍形成しない幹細胞治療に適した細胞である。今回脊髄損傷に対する効果について検証した。
<Methods>
インパクターを用いて脊髄損傷を作成し、翌日Muse細胞を30万個投与した(免疫抑制剤は1日おき投与)。運動機能(BBBスコア)、免疫染色(シスト形成、下降疼痛抑制系、Muse細胞の存在)を評価し、8W後にジフテリアを投与することでMuse細胞を破壊し機能回復に変化があるかを検討した。
<Results>
Muse細胞投与で運動機能が有意に改善し、脊髄内のシスト縮小・5-HTファイバーの保持が得られた。Muse細胞(ヒトMit抗体)の60%が神経細胞マーカー(MAP2)を発現、グリア(GFAP)は15%発現していた。8W後にジフテリアを投与すると機能低下がみられ、効果はMuseの神経系への分化が理由と考えられた
<川堀の感想>
比較的シンプルな実験系であるが、良いデータが得られていると思われる。5HTは感覚神経なので感覚のテストも行った方が良かっただろう。我々の実験ではMSCは静脈投与で脊髄に存在しなかったので、そこは本実験とは違う結果となっている。