FGF2はTGFb2を抑制することで幹細胞の老化を防ぐ
FGF-2 suppresses cellular senescence of human mesenchymal stem cells by down-regulation of TGF-b2
Ito T, Sawada R, Fujiwara Y, Seyama Y, Tsuchiya T.
Biochem Biophys Res Commun. 2007 Jul 20;359(1):108-14
<Abstract>
骨髄幹細胞の老化に関してFGF2の関与を調べた。FGF2投与はTGFb1ではなく、b2を抑制することで、下流のp21, p53, p16をDownregulationしてG1期において細胞周期を停止させていた。この効果によっては細胞老化(b-gal低下、BrdU取り込み低下)を防いでいた
<Figureの説明>
FGFを入れることで培養50日目のb-gal発現(C→D)が抑えられ、G1期も75%前後に保たれていた。
<Introduction>
FGF-2は骨髄幹細胞の成長を促進する働きがあり、TGF-bはcyclin-dependent kinases(CDK)を制御してG1期で細胞分裂を止める働きがある。幹細胞は培養を繰り返すことで老化して増殖が悪くなるが、FGF-2はTGF-bに作用して老化を食い止める効果があるのかを検討した
<Methods>
ヒト骨髄幹細胞(5000個/cm2)に、FGF-2/TGFb1/TGFb2などを入れて評価した。評価は、老化:SA-b-Galで、分裂:BrdU(ELISA)で、細胞周期:Propidium iodide(FACS)で、タンパクmRNA:Western, PCRで評価した。
<Results>
細胞にTGF-b1/2を入れるとb-gal↑、分裂↓、G1期↑(通常75%→90%にup)、mRNA(p16,p21,p53:細胞分裂抑制)↑、Retinoblastoma protein (RB)↓で細胞が老化した。一方FGF2はこれらの反応を長期(50日目)に渡って抑制し、抗老化作用があった。FGF2はTGFb1では無くb2を抑制していた。
<川堀の感想>
幹細胞の細胞周期を調べるために読んだ論文。細胞老化はG1期で分裂が停止する事を初めて知った。この論文の残念なところは観察研究であること。本当にFGF2がTGFb2を介して老化を抑制しているのであれば遺伝子のノックダウンなどをしないと直接の証明にはならないがそのデータは無い。ただ幹細胞の老化は非常に重要な問題なので解決出来ると良いなと思う。