DOAC同士の脳梗塞率・出血率の比較試験
Effectiveness and Safety of Oral Anticoagulants Among Nonvalvular Atrial Fibrillation Patients.
Lip GYH, Keshishian A, Li X, Hamilton M, Masseria C, Gupta K, Luo X, Mardekian J, Friend K, Nadkarni A, Pan X, Baser O, Deitelzweig S.
Stroke. 2018 Dec;49(12):2933-2944.
<Abstract>
米国保険データを使用し、2013-2015でワーファリンとDOAC内服中のaf患者28万人を対象とし、脳梗塞・重症出血をPMS法で比較した。DOACは全てワーファリンより脳梗塞発症が少なく、アピキサバンとダビガトランは出血も低かった(リバロキサバンは逆に多かった)。DOAC間にも差が見られた。
<Figureの説明>
上がアピキサバンVSダビガトラン、中がアピキサバンVSリバロキサバン、下がダビガトランVSリバロキサバン。多くの項目で1より左側にHazard Ratioが存在する(つまり良いということ)。脳梗塞再発率・出血率においてアピキサバン→ダビガトラン→リバロキサバンの順に良いことを示す結果。
<Introduction>
心房細動患者の脳梗塞予防は重要で、長らくワーファリンが第一選択であったが、狭い治療域/食事制限/定期採血などがネックであった。これをクリアする4つのDOACがワーファリン非劣勢を証明し臨床応用されている。ただDOAC間の比較は無いため後ろ向き研究で比較した。
<Methods>
メディケアを含む5つの米国医療保険(カバー人口56%)からデータを採取した。2013-2015にDOAC/ワーファリンを処方されたaf患者を対象とし(弁膜症などは除く)、要入院の脳梗塞・重症出血(消化管or脳)を調査した。プロペンシティースコアマッチングで各群を統一した。年齢や投与量などのサブ解析も行った。
<Results>
ワーファリン(W)12.7万人、ダビガトラン(D)2.8万、アピキサバン(A)6.3万、リバロキサバン(R)10.3万で、PMS前の脳梗塞率(/100人/年)DOAC1.3-1.5人・W2.2人、出血率はW6.3・D&A3.5・R5.3であった。PMS後、DOACはWより再発率が低かったが、出血はD&Aは低いがRはWより高かった。DOAC間比較はAがD&Rより脳梗塞・出血が低く、DはRより出血が少なかった。
<川堀の感想>
後方視的検討とは言え、プロペンシティースコアマッチング法を用いて患者背景を会わせた上でDOAC間を多くの人数で検討したのはすごいことだ。結果は、ワーファリンが論外なのはもちろんのこと、日頃の印象と同じくリバロキサバン(イグザレルト)は出血の頻度が高かった。しかし本研究では大きな出血も小さな出血も出血1としてカウントされるため出血の程度の評価がなされていないし、イグザレルトは一日1回で良いという大きな利点があることから、イグザレルトが完全に無くなるとは考えられない。今後もベストなDOAC選択は患者によって変わってくると思われた。エドキサバン(日本発)が入っていないのは残念。
既に前向きRCTとして台湾のDARING-AF Trial(NCT02666157)とデンマークのDANNOAC-AF Trial(NCT03129490)が走っているとのこと。結果が楽しみだ。