小児遺伝性疾患に対する細胞移植

Central nervous system stem cell transplantation for children with neuronal ceroid lipofuscinosis. J Neurosurg Pediatr. 2013 Jun;11(6):643-52. Selden NR, Al-Uzri A, Huhn SL, Koch TK, Sikora DM, Nguyen-Driver MD, Guillaume DJ, Koh JL, Gultekin SH, Anderson JC, Vogel H, Sutcliffe TL, Jacobs Y, Steiner RD.

 Abstract
neuronalceroid-lipofuscinosisNCL)は特定の蛋白分解が阻害される遺伝性の進行性・致死性疾患であるが、動物実験で神経幹細胞を移植することで改善することが分かっている。6人の重症患者に幹細胞を投与し安全性を確認したが効果は限定的であった。

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移植細胞のDNAが4年後でも確認できた。また一部は移植から3cm離れたところに移動していたことが分かった。

Introduction
neuronalceroid-lipofuscinosisNCL)はCNL遺伝子の異常でタンパク質を分解する酵素(PPT1/TPP1)が働かず神経細胞等にリポフスチンが蓄積する遺伝性・致死性の疾患である。これらの酵素を持つ神経幹細胞の移植によって改善する可能性があり治験を行った。

Methods
I相試験。2-9歳の患者6人を対象。神経幹細胞は中絶から得られた脳を使用。3人は5000万個、3人は1億個の細胞を移植。各半球に14mm離して4カ所に20Gの針で脳表から2cm以上、下に細胞を投与。12ヶ月の免疫抑制を投与。12ヶ月の評価の後は4年ごとにフォローした。死亡後に剖検を行った。

Results
合併症は免疫抑制剤か疾患の進行に伴うものであった。全ての患者が1-5年で死亡したが、疾患の進行によるもので急性期病変はなかった。脳のPCRで細胞のDNAが確認でき、それは3cmほど移動していた

<川堀の感想>
1年の免疫抑制が終わって、4年経った5年後でも他家細胞で細胞DNAが確認されたことが驚きであった(ただし、DNAが検出されたのみであって、機能を果たしていたかは不明)。病気に対して幹細胞を投与し脳内の細胞に分解酵素を供給するというアイデアであったが、効果は限定的であったのは残念だが十分予想されるものである(脳内全ての細胞に障害を来している病気に対して局所の細胞投与の効果は見込めないだろう)。ただAbstractの書き方は臨床研究を適格に示していて参考になった。