軸索分化型iPSを脊髄損傷に投与すると軸索再生が得られる
Grafted Human iPS Cell-Derived Oligodendrocyte Precursor Cells Contribute to Robust Remyelination of Demyelinated Axons after Spinal Cord Injury
Kawabata et al. Stem Cell Reports. 2016
<Abstract>
iPSは主にNeuronへ分化するが、今回Oligodendrocyteに特に分化する方法を確立したので、脊髄損傷部位において再軸索化に寄与するのかどうかについて検討した。
<Figures>
Illustrative figure:今回の研究が非常に分かりやすくまとめられている
D投与した幹細胞(Stem121)が軸索タンパク(MBP)と同部位に発現しており、一部が軸索になったと考えられる。
G強拡大のAxial断面ではNF-H軸索神経周囲にGFPとMBPが発現しているしている
<Introduction>
脊髄損傷後の幹細胞治療の機序にはNeuron/Astrocyteなどの補填、損傷Neuronの回復、Oligodendrocyteによる再軸索化などがある。iPSは主にNeuronに分化することが多いので今回Oligodendrocyteへの分化の方法を確立し、脊髄損傷モデルにおいて再軸索化に関与可能かを検証した
<Method>
ヒトiPS細胞に神経系分化を行い、Neurosphere形成を行った(作成には45-60日)。SCIDマウスのT10レベルに外傷性脊髄損傷を行い、50万個の細胞をEpicenterに投与した。12週にわたり歩行機能を評価した。H&E染色、LFB染色、免疫染色(GFP・Tubulin・Hu・HNA・Human cytoplasm・MBP・GFAP・Nestin・NF-H(軸索)・5-HT(セロトニン軸索)・Caspr(ランビエ絞輪)・Kv1.2(Naチャネル)・hSyn)を行った
<Result>
iPSにOligodendrocyte特異的分化させると通常のNeuron分化とは違いVEGF発現などが上昇した。それを投与すると脊髄損傷部において軸索に分化(主に免疫染色)していて、運動機能の改善と電気生理学的改善が得られた
<川堀の感想>
Oligo分化iPSの方がコントロールよりよかったという結果で、特に軸索の再生、栄養因子による改善、新規神経サーキットの新生が得られたとの事であったが、免疫染色が中心の研究であり、生体内での実際に移植細胞が機能していたかについては依然不明である点が課題と考える