脂肪幹細胞シートを用いた脳梗塞治療
Allogeneic adipose-derived mesenchymal stem cell sheet that produces neurological improvement with angiogenesis and neurogenesis in a rat stroke model
Bikei Ryu, Hidekazu Sekine, Jun Homma, Tomonori Kobayashi, Eiji Kobayashi, Takakazu Kawamata and Tatsuya Shimizu.
J Neurosurg. 2019. [Epub ahead of print]
<Abstract>
細胞のベストな投与方法は依然不明である。ラット脳梗塞モデルに脂肪由来の細胞シートの効果を検討した。シート群はコントロール群に比べ、新生血管と神経再生が得られ、運動機能回復が良かった。移植細胞は血管周囲(NVU)にペリサイトとして存在し、ホストの血管と新たな血管をつないでいた
<Figureの説明>
(上)脳の表面に緑色の幹細胞が存在し、そこから髭のように伸びる新たな血管が確認できる。
(下)幹細胞が血管新生を促したのがわかる。また紫の血管で新たにできた血管が既存の血管とつながったのがわかる
<Introduction>
Neurovascular unit(NVU)、さらにそれを構成するPericyteに着目して、脂肪由来間葉系幹細胞シートを用いて脳梗塞動物の回復を検討した。シートはセルシード社の温度感受性dishを用い、脳表に貼ることにした(点滴投与よりも多くの細胞を送り、脳内投与よりダメージを小さくできるため)。
<Methods>
鼠径部より取得した脂肪細胞(P5-6)を用いてセルシード社の温度感受性dishでシートを作成し、3枚重ねて使用した。脳梗塞はスレッドモデルで2日後に脳梗塞部位に細胞シートを張り付けた。運動機能・病理所見(3次元透明法Sca/e)・血管新生・PCR(栄養因子)の変化を評価した。
<Results>
取得した細胞はMSCの表面抗原(CD29/90+, 11b/45/34-)と分化能を有し間葉系幹細胞であった。脳梗塞ラットの脳に細胞シートを張った。14日目には細胞は脳表にはなかったが、脳内でペリサイトになっていて、運動機能改善・梗塞巣縮小・血管新生・血流上昇が認められた。
<川堀の感想>
幹細胞シートをミルフィーユみたいに3枚重ねて脳に貼ることで運動機能改善が得られたという素晴らしい報告。ただこれは脳梗塞急性期の投与であり、実際の患者さんではこのタイミングでの脳への細胞張り付けはリスクが高く臨床応用には課題がある。