同じMSCを違う施設で育てると違うものができる
Human Mesenchymal Stromal Cell (MSC) Characteristics Vary Among Laboratories When Manufactured From the Same Source Material: A Report by the Cellular Therapy Team of the Biomedical Excellence for Safer Transfusion (BEST) Collaborative
Stroncek DF, Jin P, McKenna DH, Takanashi M, Fontaine MJ, Pati S, Schäfer R, Peterson E, Benedetti E, Reems JA.
Front Cell Dev Biol. 2020 Jun 16;8:458.
<Abstract>
同じ骨髄液を使っても、違う施設・違う方法でBMSCを作成した場合、どのくらい性質が変わるのかを検討した。各施設で作成された幹細胞は細胞マーカーや免疫抑制能は同程度だったが、生存率は23-90%とバラバラで、遺伝子発現も施設間での違いが大きいことが分かった。またこの違いはドナーの違い以上であった。
<Figureの説明>
実験の方法:20歳前後の3人から骨髄液を取り、5か所に送った。左から4つ目の施設が日本でそれ以外はアメリカ。それぞれの施設で独自の方法で育てて凍らせて送り返した。
凍結解凍後の細胞生存率はSite4(日本)が悪い傾向にあった(A)。BCDは3人のドナーでの状態(やはり日本が悪い→凍結輸送時間が長いためだろうか)
Microarrayのクラスタリング。細胞の遺伝子発現の違いはドナーの違いよりも施設(方法)の違いに依存することが分かった。
<Introduction>
間葉系幹細胞(MSC)は様々な疾患に効果が効果があることが示されている一方で、同じ疾患でも効果がないという報告もある。これはMSC作成の工程(細胞採取元、メディウム、添加剤の種類、播種密度、時間)が標準化されていないことが考えられる。今回施設間での製造の違いがMSCに及ぼす影響について検討した。
<Methods>
3人(20代)から骨髄液を採取し5つの施設(米4日1)に配送(室温輸送)し、独自の方法で培養(骨髄液or単核球スタート、FBSorPL、フラスコorディッシュ)で培養し、凍結保存して返送した。それらを増殖速度・生存率・分化能・表面マーカー・Microarrayで比較した。
<Results>
骨髄液輸送時間は米国24時間日本50時間で、到着した生存細胞数には倍くらいの違いがあった(本来は同じはず)。培養速度はドナーよりも施設の違いが大きかった。返送された細胞の生存率は日本からが悪い傾向があったが、出来た細胞の表面マーカーや分化能は同じだった。遺伝子解析の違いはドナーよりも施設間の違いが大きかった。
<川堀の感想>
同じ人からとった細胞でも育て方によって出来るものが変わってくるという結論。ただ実験としては条件があまりにもバラバラすぎる(ある意味Real world data)。最も良い細胞の状態とは何であろうかと考えさせられる。我々の研究(RAINBOW2)に有用なことは骨髄液が常温で運べた事と凍結輸送はやはり短時間でなければ生存率が下がることだろう。