凍結乾燥エクソソームによるライソソーム病の治療研究

Extracellular vesicles from recombinant cell factories improve the activity and efficacy of enzymes defective in lysosomal storage disorders
Joaquin Seras-Franzoso et al. Spain J Extracell Vesicles. 2021 Mar;10(5):e12058. 

<Abstract>
特定のタンパク分解酵素(GLA)が無いため全身に不要なタンパクが溜まってしまうリソソーム病を治療するためGLAをエクソソームに入れて凍結乾燥させ、その後投与したところ現在用いられている酵素補充療法より高い効果があった。酵素補充ではBBBに阻まれる脳への取り込みも問題なく行われていた

<Figures>

乾燥凍結後のエクソもちゃんとA形態&Bサイズが保たれており、CD効果も発揮されている。

ABCD動脈投与と静脈投与の比較。ともに肝臓がほとんどだが、脳への集積も動脈投与では確認できた。E通常のIVでは酵素活性は確認できないが、エクソ入りなら1週後も効いていた

 <Introduction>
特定のタンパク分解酵素を遺伝的に欠損した病気群としてリソソーム病があり、全身の臓器が障害を受ける。近年GLA等の分解酵素補充療法が始まったが脳血液関門を超えないなどの課題がある。新規治療として遺伝子治療・抗体治療などが試みられているが課題が多い。エクソソームはBBBを通過できる運び屋として有能なので今回リソソーム病に効果があるか検討した

<Method>
GLAの遺伝子導入を細胞株に行った。培養液を超遠心とクロマトグラフィー法で採取し、電顕・Western blotting・酵素活性を評価した。ラベリングはDil、凍結乾燥機で150ul(-80℃)のExo液を保存可能にして、のちにGLAノックアウトマウスに投与した。

 <Result>
生成されたエクソには多くのGLAタンパク(細胞含有量の60%3fg/particle)が含まれていて、過去の報告より30倍以上高い。Exoに入れると単独投与よりも、細胞への取り込み(約4%FACS)と神経細胞ダメージ抑制が得られた。乾燥凍結したものも同様の機能を発揮した。IVでは肝臓、IAでは肝臓&脳への集積が見られ、酵素活性が確認された。

 <川堀の感想>
エクソの凍結乾燥が有効であることを示した論文であり、リソソーム病の患者を救う重要な治療法になると考えられた。我々も大容量の培養液からエクソを取り出す技術の開発を進めており、これに応用できると考えている。