トラクトグラフィーを用いた脳梗塞の麻痺改善予測
Three-dimensional white matter tractography by diffusion tensor imaging in ischaemic stroke involving the corticospinal tract.
Kunimatsu A1, Aoki S, Masutani Y, Abe O, Mori H, Ohtomo K. Neuroradiology. 2003 Aug;45(8):532-5. Epub 2003 Jul 11.
<Abstract>
トラクトグラフィーは3次元的に脳内の神経線維を見ることが出来るMRI撮像法である。8人の急性期脳梗塞で運動神経線維が内包後脚部分で障害されているかどうかを検討した。トラクトグラフィーが梗塞内を通過していない5名は麻痺が完全回復し、通過している3人中2人は回復が不十分であった。脳梗塞の回復の可能性を指摘できる可能性がある。
<Figureの説明>
運動神経(Cの線)が脳梗塞(BCの白くなっているところ)を通過している。この場合はあまり改善が期待できない。
<Introduction>
拡散異方性を見るテンソル画像(DTI)から神経線維の走行を非侵襲的に見ること(トラクトグラフィー)が可能である。脳梗塞の白質病変では拡散異方性が低下することが知られているが麻痺の回復と関係しているかは不明である。そこで梗塞部位にトラクトグラフィー(運動神経線維)がかかっているかどうかが回復に関係するか検討した。
<Methods>
内包後脚もしくは放線冠に梗塞がある8名を対象とした。DTIを含むMRIを発症6-12時間後に撮影した。中心前回と内包後脚/放線冠の傷害されていない部位をROIとしてトラクトグラフィーを作成した。MRIの梗塞部位とトラクトグラフィーによる運動神経との位置関係と麻痺の改善を比較した。
<Results>
全ての患者でトラクトグラフィーを作成でき、運動線維は解剖学的走行と概ね一致した。線維は主に中心前回の前方に投射したが、一部は外側下方にも投射された。梗塞巣の中をトラクトグラフィーが通過していない患者は完全麻痺でも完全に回復した。一方梗塞の一部を運動千位が通過している患者は回復が不十分であった。
<川堀の感想>
脳梗塞急性期に麻痺が強かったとしても、脳梗塞周囲の血管性浮腫(腫れ)の可能性がある。この場合は回復の可能性が十分考えられるが、今回は脳梗塞(DWI)でダメージを受けている部分以外に運動神経線維が走っている場合は回復の可能性が高かったことを示している。再生医療においても麻痺が改善する可能性が高い患者とそうで無い患者を分けることが出来る可能性があると考える。ただ梗塞巣内は線維が出てこない可能性もあることから注意が必要だろう