コロナ患者への血栓回収療法(AHAガイドライン案)
Endovascular Therapy for Patients With Acute Ischemic Stroke During the COVID-19 Pandemic. A Proposed Algorithm
Matthew S. Smith, et al. Cincinnati VA Medical Center, University of Cincinnati, OH.
Stroke. 2020 Jun;51(6):1902-1909.
<Conclusion>
コロナ患者の脳梗塞に対する血栓回収療法についてのこの施設でのやり方の提案。気管挿管の不要→要→人工肺の3つのステージに分けて検討。また外来対応、入院対応、医療設備不足施設での対応法も検討している。基本的には感染対策を十分に行ってAHAガイドラインが満たす患者のみに血栓回収を勧めていて、人工肺まで行くと適応は無いとしている。
<Figureの説明>
血栓回収を必要とする患者でCOVIDが疑われる場合のフローチャート。COVIDの定義は38℃以上の発熱、呼吸数24回以上、7日以内の感染兆候があげられる。
<Introduction>
コロナ患者の全体死亡率は2%(80歳以上は15%)で、不整脈(16%)、心不全(23%)、脳梗塞(5%)と循環器疾患の合併率が高い。血栓回収が必要な脳梗塞患者でコロナ感染が疑われる場合の対応について①救急外来対応、②入院患者の発症、③治療資材不足の病院での発症についてこの施設の専門家の意見を集約した。
<Methods>
シンシナティ大学は年間200件の血栓回収を行っている。今回呼吸症状のある患者は他の患者とは別に診察室を設けている。院内の専門家から意見を集約し、PubMed情報、CDC情報、WHO情報も足してどのような対応が最適かを検討した。
<Results>
コロナの死亡率の低さ(2%)を考えるとそれ自体が血栓回収の除外基準ではない。①発熱(38℃)、呼吸数(24回/分)などからスクリーニングし、陰性なら通常対応。②挿管が必要なら陰圧室で感染を防ぎながら行うべきで、人工呼吸器はウイルスフィルターを2つ以上使用し、人工肺まで行くと生存は厳しいため血栓回収は行わない。それでも感染のリスクがあるので、血栓回収はAHAガイドライン適合患者のみにする
<川堀の感想>
概ね常識的な提案であるが、人工肺(ECMO)まで必要になった場合には死亡率が高く、他人への感染との観点から血栓回収は行わないという判断を勧めている。どこかに線を引かなければいけない状況であればこのようなガイドラインは有効であると思う。また医療リソースが不足した施設での対応(機械を残すため重症は対応しないなど)も新しい考え方である。今後も起きる大規模感染に備えて日本にもある程度のガイドライン作成が必要だと考える。