脳梗塞後の画像に出ない神経細胞の異常をIMZ-SPECTで検出できる

Iomazenil–Single-Photon Emission Computed Tomography Reveals Selective Neuronal Loss in Magnetic Resonance-Defined Mismatch Areas
Dorothee Saur, Ralph Buchert, Rene Knab, Cornelius Weiller, Joachim Rother,
Stroke. 2006 Nov;37(11):2713-9

 Abstract
脳梗塞を免れた低還流部位はMRI画像は正常でも神経細胞にダメージを生じている事を神経細胞の受容体であるIMZSPECTで検証した。基底核部脳梗塞(SC群・n=12)の患者でMRI上正常に見える皮質部のIMZ値は正常な対側より2-8%減少していて、やはり部分細胞死が生じている事が分かった。

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上段:ミスマッチが無い患者:血流低下が全部梗塞になっている人はその場所のIMZが低下している(当たり前)
中段:ミスマッチがある患者でIMZ低下:梗塞にはなっていない血流低下部(青)の中にIMZ低下部(緑)が多く存在する
下段:ミスマッチがある患者でIMZ非低下:梗塞にはなっていない血流低下部(青)の中に少ししかIMZ低下部(緑)が無い

梗塞患者(赤△)はIMZが85%(つまり対側より神経細胞が15%減少)になっているが、ミスマッチあり患者(黒◆)は95%(5%ほどの低下で済んだ)。

Introduction
血流は低下しているが脳梗塞にならなかった部分(DWI/PI mismatch)ではMRIでは異常を認めないことが多いが、神経細胞の部分的な死が生じていると考えられる。神経細胞表面のベンゾジアゼピンレセプター(GABA)結合能の評価を行うIMZ-SPECTを用いてmismatch部の神経細胞の動態を調べた

Methods
発症6時間以内の脳梗塞で、発症時広範囲に低還流(TPP>4秒)があったが7日目FLAIRでは基底核部のみ脳梗塞(Threshold>4*SD)になったミスマッチ12名を対象とした(低還流=梗塞になったマッチ3名がコントロール)。IMZ-SPECTでMRIで上記ミスマッチとなった皮質の左右比(AR値)を検討し、低下と低血流の関係も検討した。

Results
ミスマッチの梗塞データとして低血流部位100ml&梗塞20ml(ミスマッチ80ml)で皮質ミスマッチ部は70ml。完全梗塞を生じた患者のAR値は0.8515%低下)であったが、ミスマッチ梗塞患者では0.955%低下)であった。また血流低下の程度とIMZ値には弱い相関が認められた。

<川堀の感想>
血流が途絶えて低還流となったが、何とか脳梗塞(FLAIR high)を免れた場所でもある程度の神経細胞の死が認められるとのことであった。神経細胞の中にも弱いのと強いのがいると思われ、弱い神経が先に死亡したというある意味了解可能なデータであった。画像上問題は無い患者でも症状が残る事はよくある事で、それを鋭敏に画像化できれば次の治療法につなげることが出来ると思われた。ただ全員被ばくする核医学検査するわけにもいかず、分かっても今のところ有効な治療法が無いところが難点(再生医療に可能性あり)