脳動静脈奇形(AVM)に対する静脈塞栓術
Safety and Efficacy of Transvenous Embolization of Ruptured Brain Arteriovenous Malformations as a Last Resort: A Prospective Single-Arm Study.
He Y, Ding Y, Bai W, Li T, Hui FK, Jiang WJ, Xue J.
AJNR Am J Neuroradiol. 2019 [Epub ahead of print]
<Abstract>
破裂脳動静脈奇形(AVM)に対する静脈塞栓術の成績を調べるため、21名の患者(SMグレードが、I:3人、II:4人、III:11人、IV:3人)で評価した。2名で治療不可だったが、19人中16人で直後に完全塞栓、1人で6ヶ月後閉塞が得られた。合併症は脳出血:5人、脳梗塞1人だったが、後遺症残存は1名だけだった。
<Figureの説明>
かなり大きなAVM(治療前AB)でも静脈からOnyxをいれてナイダスをつぶすことが出来ている(治療後EF)。
<Introduction>
AVMによる出血は死亡率(12-67%)が高い。治療は血管奇形部(ナイダス)の血流を絶つことが必要で、顕微鏡手術(深部や重要組織周囲が苦手)、放射線手術(詰まるまで時間がかかる)、血管内動脈塞栓手術(栄養動脈が多い場合や血管蛇行が苦手)などが行われるが、完全ではない。経静脈塞栓術はこれらを克服しうる可能性があるため検討した。
<Methods>
患者は破裂AVMで、他の治療法が難しい(SM3分類以上、強い動脈屈曲など)かつ流出静脈が1本のみの21人。動脈側もコイル・グルー・バルーンで血流を落とし、1or2本のマイクロカテをナイダス静脈側に留置し、ONYXで塞栓(肺塞栓等の防止するために静脈内にコイルを留置(pressure cooker technique))。
<Results>
治療は出血後47日(9-164日)で、2例でカテが留置出来なかったが出来た19例では直静脈洞9例、上矢状静脈洞6、横静脈洞4例で、平均4時間、Onyx3.8ml(0-13)。16/19例で直後に閉塞、3例で一部残ったが2例でその後閉塞。合併症は6例(脳室内出血4例、脳内出血1例、脳梗塞1例)で4例回復、1例後遺症、1例死亡であった。
<川堀の感想>
AVMの手術の基本は静脈へのflow outを絶つこと無く、動脈からのin flowを抑えると習ってきたが、動脈側の血流を落としているとはいえ、静脈側から詰めるというアイデアは新しいものである。全例で通用するわけではないが、他の方法が無い場合には選択肢になり得ると考える。ただ、それなりの合併症率であることを考えると、AVMの自然出血歴(例え出血発症でも)を考え必要以上に攻める(詰める)治療法は必要ないかもしれず、出血した部分のみを処理するという考え方も十分有りだと思う。