アルツハイマー病へのMSC由来エクソソームの経鼻的投与の臨床研究
Clinical safety and efficacy of allogenic human adipose mesenchymal stromal cells-derived exosomes in patients with mild to moderate Alzheimer’s disease: a phase I/II clinical trial.
Xie X, Song Q, Dai C, Cui S, Tang R, Li S, Chang J, Li P, Wang J, Li J, Gao C, Chen H, Chen S, Ren R, Gao X, Wang G.
Gen Psychiatr. 2023 Oct 11;36(5):e101143.
<Abstract>
他家脂肪由来間葉系幹細胞から採取したエクソソームを週2回12週間、経鼻的投与する事でアルツハイマー病が改善するかについて第1/2相臨床研究を行った。8例の患者に投与し、中等量(4×10^8個)投与群で認知症スケールの改善、海馬の萎縮抑制が得られた。ただアミロイド沈着量は変わりなかった。
<Figures>
黒が少量群(2×10^8個)、オレンジが中等量群(4×10^8個)、青が大量群(8×10^8個)。中等量でADAS-cog低下、MMSE上昇、MoCA上昇と良い結果が得られた。ただ改善値は1割程度と小さい事に注意
<Introduction>
認知症の原因のアルツハイマー病に対して、間葉系幹細胞MSC由来エクソソーム(30ug)の経鼻的投与が機能改善をもたらしたという基礎研究を報告し、作用機序として神経保護・アミロイド沈着抑制・マイクログリア活性抑制が挙げられていて、今回臨床研究を行う事にした。
<Method>
登録番号NCT04388982。他家脂肪MSC培養液500mLを超遠心して3×10^10個のエクソソーム(大きさ・CD9/81/63等陽性)を回収した。凍結保存した2/4/8×10^8個/1mLを週2回で12週経鼻的に投与した。ADAS-cogスコアやアミロイドPETで術後の状態を評価した
<Result>
8名の軽~中等症のADに小3、中3、大2のExoが経鼻的に投与されたが、合併症は無かった。症状は中群でMMSEとMoCA-Bで改善が6か月後まで認められた。しかし別の指標(NPI)では家族(良好)・本人(悪化)と乖離が見られた。アミロイドPETでは明らかな違いは認められなかった
<川堀の感想>
平均で1割程度の改善であり効果があったとはいいがたいと思う。エクソソームを抽出するには非常にコストがかかるためこの程度の効果ではなかなか臨床応用は難しい。より効率的な脳への到達が得られる必要が有るだろう。また我々はもっと多くの量を動物に投与しているので投与量が少なすぎた可能性もあると思う