脳梗塞後の麻痺の程度とかかるコスト
Ordinal vs dichotomous analyses of modified Rankin Scale, 5-year outcome, and cost of stroke.
Aravind Ganesh, MD, Ramon Luengo-Fernandez, DPhil, Rose M. Wharton, MSc,and Peter M. Rothwell, FMedSci, on behalf of the Oxford Vascular Study
Neurology® 2018;91:e1951-e1960.
<Abstract>
mRSの3種類の評価方法(0-6の7段階、0-1/2-6と0-2/3-6の2段階)のうちどれが長期予後とコストの評価に優れているか検討した。2002-14のコホート研究で1607人の脳梗塞患者を検討し、発症3ヶ月後mRSと1、5年後予後、コストと相関が強かったのは6段階評価であった。
<Figureの説明>
B:発症3ヶ月時のmRSと5年後の生存率の関係。mRS2点は25%程度だが、mRS3点になると60%近くまで跳ね上がる。
C:発症3ヶ月時のmRSと5年間の医療コストの関係。mRS2点と3点の間で350万円ほどの開きがある。
<Introduction>
mRSは脳梗塞の予後判定に広く用いられている。近年は0-1(良好)/2-6(不良)や0-2/3-6など2段階で評価されることが多いが、これはサンプル数が多くなったり、一部の回復群(5→3でも不良)が過小評価されるなど、適切かは不明である。今回脳梗塞後3ヶ月のmRSと5年後の予後とコストをmRSを3つの分類法で検討し、どれが最も相関があるか検討した。
<Methods>
2002-14でイギリスオックスフォード(人口9.2万)で脳卒中と診断された患者の発症から5年後までの情報(mRS等)を収集した。入院や施設入所にかかるコストは$1100/週で計算した。発症3ヶ月後mRSと5年後予後を0-5の6段階と0-1(予後良好)/2-6(予後不良)or 0-2/3-6の2段階で分けて検討した。
<Results>
3ヶ月以上生存した脳梗塞患者(11.3%は3ヶ月以内に死亡)1403人で評価した。死亡率、麻痺の程度共に、3ヶ月後mRSと1年後・5年後と正の相関があった。ただその中で変化の割合が大きかったのはmRS2と3の間であった(3以上は3以上のまま、2は0や1に回復している)。mRSが1改善すると5年で250万円程度の医療費が削減されていた。3つの分類法では0-5の個別評価が一番相関していた。
<川堀の感想>本研究の重要な発見は
①3ヶ月後の麻痺の具合(mRS)とその後の死亡率・麻痺改善度には明らかな相関が認められ、その中でも3以上は麻痺改善が難しいということ。つまり2以下であればかなり日常生活に戻れて、3以上は悪化の道をたどるという分岐点と考えられる。(下)
3ヶ月後麻痺 |
mRS2 |
mRS3 |
mRS4 |
mRS5 |
1年後死亡率 |
3% |
10% |
20% |
40% |
5年後死亡率 |
20% |
60% |
60% |
80% |
②直接の医療コストはmRSが1軽いと、250万円/5年の削減が得られるということ。ただこれは間接経費を入れていない。
これらから分かることは急性期の脳梗塞治療の目標は3ヶ月後にmRS2以下の状態を目指すということで、慢性期ではmRSが1点改善出来れば年間50万円の直接医療費の削減が得られると言うことだと思う(間接経費は約4倍と言われているので250万の削減効果)。再生医療はまずはmRSで1点以上の改善を目指したい