はじめに

くも膜下出血の原因になるコブが破れる前に見つかったものです。頭痛検査や脳ドックなどで見つかることが多いです。サイズや場所によって破れやすさに違いがありますので、必ずしも手術治療をしなければいけないというものではありません。

症状

血管の一部が膨らんでいるだけなので、ほとんどの方は症状がありません。ごく稀に目の神経の近くに動脈瘤が出来ることで物が二つに見えるなどの症状が出る人もいます。

検査方法

通常は頭部のMRIに引き続いて行われるMRA(MRIの機械を用いて取る脳の血管撮影)で見つかることが多いです(図1)。これで脳動脈瘤が疑われる場合には造影剤を使ったCT検査(図2)やカテーテルを使った血管造影検査(図3)で確実に診断します。

図1
図2
図3

見つかったらすぐ治療?

動脈瘤の破裂する危険性は日本人のデータで年間0.95-1.4%程度です。つまり100人の動脈瘤の患者さんがいて、1年間に1人破裂する計算になります。ヨーロッパの研究では7mm以下の動脈瘤の1年間に破裂する危険性はほぼ0%というのがありますが、日本人では3-4mmで年間0.4%5-6mmで年間0.5%と全くないわけではありません。ちなみに動脈瘤は大きければ大きいほど破裂する危険性が高まります(25mm以上は33%)。一旦破れるとくも膜下出血になるため35-50%の方が亡くなります。手術治療自体にリスク(脳損傷など)がありますので、“やった方がいい”“まだ様子を見れる”など同じ動脈瘤でも医師の間でも意見が分かれます。
そのため一定のルールが、日本脳卒中ガイドライン2015に載っています。
下記の動脈瘤は破裂高危険群であり、治療を検討することが勧められる
①大きさ5mm以上のもの
5mm以下でも場所が前交通動脈(Acom;エーコム)、内頸動脈後交通動脈(Pcom;ピーコム)にあるもの
③動脈瘤の一部が更にふくれあがる(ブレブ)、形が不整なもの

ただし、実際はこれだけで判断できるわけではなく、患者さん個々人の状況も総合的に判断しています。(個人的には2mmで破裂した20歳の治療を行ったこともあります)

治療方法

残念ながら飲み薬や放射線治療では治癒しません。くも膜下出血と同様に開頭して動脈瘤を金属のクリップで留めるクリッピング手術と血管の内側から金属の糸(コイル)を入れたり筒で入り口をふさぐ(ステント)などの血管内治療があります。

A:開頭によるクリッピング手術

頭の骨をあけて、顕微鏡下に脳のしわを分けていき、破れた動脈瘤の根元に金属のクリップをかける方法です。
メリット
①長い歴史があり長期間にわたる有効性が確立している(再治療を必要としない)こと、
②動脈瘤の形によらず多くの場合は治療が可能なことが上げられます
デメリット
①既にくも膜下出血で痛んだ脳を分けるため更なるダメージの危険性があること、
②開頭による全身の負担が大きい(特に高齢者)ことなどが上げられます。

写真左:クリップ前の動脈瘤
写真右:クリップ後の動脈瘤

 

B:血管内アプローチによるコイル塞栓術

頭を切らないで治療出来る方法で近年注目を集めています。
太ももや手の動脈から細い管(カテーテル)を脳内の動脈瘤周辺に運び、金属の糸(コイルと呼びます)を動脈瘤の中に入れたり、動脈瘤の入り口を金属の筒で被うことで、動脈瘤の中に血が入らなくさせる治療法です。
メリット
①頭を開けずに治療するため体への負担が小さいこと、
②脳を触らずに治療するため追加の脳ダメージが少ない
デメリット
①形の複雑な動脈瘤や血管の蛇行が強い場合には適切にコイルを置くことが出来ず治療が不完全に終わる可能性がある(再出血の危険性がある)こと
②一旦完全に詰まっても、長期間経つとコイルがつぶれることで動脈瘤内に再び血流が入り再治療が必要になることがあること
写真左:コイル挿入前の動脈瘤(赤〇)
写真右:コイル挿入後の動脈瘤(造影剤が入らなくなっている、赤〇)

 

どちらの治療法も一長一短があり、多くの施設では動脈瘤の形や場所などから最適な治療法を選択することが多いです。