症状
子ども
血管が細くなることで脳の血の巡りが悪くなる(脳虚血:のうきょけつ)ことで症状が出ることが多いです。過呼吸で症状が出ることが典型的で、「泣く、ラーメンをフーフーして食べる、笛を吹く、激しい運動の後」などに、頭痛や嘔吐、失神発作、手足の麻痺などを来たして見つかることが多いです。頭痛がひどく学校に通えないなどを理由に検査を受けて病気が見つかる方もいます(下記の治療によりかなり改善します)。
大人
脳の血の巡りが悪くなる(脳虚血:のうきょけつ)と過剰に発達した弱い血管(モヤモヤ血管)が破れて脳内出血を起こす患者とが半分半分です。突然の頭痛や意識障害、手足の麻痺などで救急搬送されて見つかるケースが多いですが、最近では交通事故等の検査で偶然見つかる(無症候性:むしょうこうせい)ケースも増えてきています。
検査方法
主にMRアンジオ(エムアールアンジオ)(図1)もしくは脳血管撮影(アンジオ)などで診断されます。簡単には、脳内の内頸動脈に狭窄もしくは閉塞があることとモヤモヤ血管があることが診断の基準となります。厚生労働省特定疾患(難病)の診断基準があり、それに基づいて診断されます(社会保障を受けるための申請にはこれをクリアする必要があります)。
図:MRAで脳の血管の一部が欠けて見えます(赤矢印)。
注意!診断を受けると一定の社会保障(市町村に応じて診療費補助など)を受けることが出来ます。担当医が把握していることが多いですが、専門でない場合にはわからないこともあります。詳しくはお住まいの市町村にお問い合わせ下さい。
治療方法
脳虚血
急性期治療
脳細胞を保護する点滴などを行い、進行を可能な限り抑制します。血が固まりにくくする薬(内服薬:バイアスピリンやシロスタゾールなど)を開始します。
慢性期治療
再発予防に脳の血の巡りを良くするためにバイパス手術などが有効とされています。皮膚の血管(耳の前にある浅側頭動脈)などを脳の表面の血管につなぐ直接バイパスと頭蓋骨の筋肉を骨の下に入れる間接バイパスがあります。それぞれの施設で治療法は多少違います。
脳出血
急性期治療
脳圧を下げる点滴が行われます。出血によって脳内の髄液の流れが障害されて意識が悪い状態(水頭症:すいとうしょう)となった場合には細い管を脳内の髄液が入っている場所に一時的に留置する(脳室ドレナージ術)が行われる場合もあります。
慢性期治療
最近の報告では、虚血と同様に、脳の血の巡りが悪く細い血管に過剰に負担がかかって出血したと考えられるので、バイパス手術を行うことで今後出血する危険性を下げることが出来ると考えられています。
最新トピックス
・最近、日本人モヤモヤ病患者の80-90%において、遺伝子変異(RNF213遺伝子)が存在することがわかりました。しかし日本人の1-2%はそもそもこの遺伝子の変異を持っていますが、モヤモヤ病を発症する人はそれ以上にすごく少ないので、この異常だけではモヤモヤ病を発症するとは言えないと考えています。多くの研究者が、遺伝子異常に、更なるダメージが加わることでモヤモヤ病を発症するのではないか(セカンドヒット理論)と考え、その原因を探っています。
・子どもと頭痛:モヤモヤ病の子どもでは強い頭痛を生じることは以前より言われていましたが、これが脳の血の巡りが悪くなることで生じていることを私たちのグループが報告しました(筆頭著者 川堀)。モヤモヤ病は進行すると手足の麻痺や計算などの高次機能も傷害される可能性が出てきます。強い頭痛が続く場合にはMRI検査を受けて、もしモヤモヤ病とわかった場合には専門の施設で治療をうけることをおすすめします。