症状
突然起きた半身麻痺(右手足もしくは左手足)、言葉が話しにくい、意識がもうろうとしているなどが代表的な症状です。「昨日寝る前までは元気だったんですが・・・」など、朝に家族が麻痺のある患者を発見することもあります。
一旦症状が出ても数分から数時間で自然に戻ることがあります。これは一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれ、血管を詰まらせた血の塊がたまたま溶けて無くなったことを意味します。この症状はその後の大きな脳梗塞の前触れと言われ、3ヶ月以内に10-15%の方が脳梗塞を起こすことがあると言われています(特に最初の2日間が多い)。そのためこの症状があった場合にはすぐに医療機関を受診する必要があります。

検査方法
脳検査
血管検査
MRIと同じ装置で一度に取ることが出来ます。脳や頸動脈の血管だけを抜き出して見ることが出来ます。詰まっている部分や細くなっている部分がはっきりわかりますが、上に書いたように金属の入っている人は取れないことが多いです。
造影剤を注射しながらCTの機械で撮影します。金属が入っている人でも撮影することが出来ますが、腎臓の悪い人(造影剤による更なる悪影響の可能性)や造影剤アレルギー(かゆくなる・呼吸が苦しくなるなど)の人には使えないこともあります。造影剤が体に入ったときに体中が熱くなる感覚があります。
CTAやMRAで異常が疑われる場合に最終診断として行われる検査です。足の付けね(大腿動脈)や肘の内側(上腕動脈)や手首(腕頭動脈)の動脈からカテーテル呼ばれる細い管を入れて造影剤を流しながらレントゲン撮影を行うことで血管を映し出します。最近では3次元撮影も出来るようになりCTAやMRAでは得られない精密な検査が行えます。しかし脳に近い血管の中に異物であるカテーテルを挿入するので血管を傷つけたり、詰まらせたりする危険性があります。
治療方法
1.急性期治療
急性期治療の目的として、障害を直すことが出来れば理想的ですが現在の医学では難しく、これ以上悪くしないことがメインになります。
tPA/カテーテル治療
血管をつめている血の塊を溶かす/取り除くことで血液を再開通させて脳梗塞の範囲を縮小しようという治療法です。患者さんによっては意識不明の重症の状態から2週間程度で歩いて帰れるまでに回復する方がいます。今まさに注目されている治療法です。点滴はtPA治療と呼ばれ、カテーテル治療は血栓回収療法と呼ばれます。時間が経ってからではもろくなった血管が出血し脳内出血を来すので、共に時間制限があります(tPAは発症から4.5時間、血管内治療は約6時間)。

2.慢性期治療
慢性期の目的としては、脳梗塞の原因を取り除き、再発させないことです。飲み薬などによる内科治療と、手術による外科治療とがあります。
▼内科治療
▼外科治療
細くなっている血管を広げる治療法
頸動脈狭窄症
細くなった頚動脈を直接手術で切開し、動脈硬化で厚くなった壁を取り除く手術です。
メリット:血管の内側に付いているゴミ(プラーク)をほとんど全て取り除くことが可能です。
デメリット:のどの神経が近くを通るため、術後に嗄声(声がかれる)、嚥下障害(飲み込みにくさ)が出現することがあります。多くは一時的なものですが、ずっと残る場合もあります。
写真左:プラークが着いた汚い血管
写真右:プラークを除去してきれいになった血管
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血管の中から直す方法です。狭くなった部分を風船で広げて金属のメッシュ状の筒(ステント)をおいて来ます。
メリット:皮膚を直接切らないので嚥下障害などの危険性がない。
デメリット:風船を広げた際にゴミ(プラーク )の一部がはがれて脳に流れていき脳梗塞を起こす危険性がある。長期間血液をサラサラにする薬を服用しなければ成らない(その後に別の病気が見つかっても手術治療を延期しなければならないこともあります
左:ステント留置前(分岐部に狭窄がある:矢印)
右:ステント留置後:狭窄が改善されています
頭蓋内血管狭窄症
血管の中から直す方法です。頸動脈ステント留置術と同じ要領で脳の血管を風船で広げます。それで広がりが不十分な場合にはステントを置くこともあります。しかし脳の血管は頸動脈より弱いことから脳梗塞などの合併症率が高く、今後の技術・機械の進歩が待たれます。
詰まってしまった血管の先に血管をつなぐ治療法
耳の前から側頭部にある皮膚の血管を脳の血管につなぐ手術です。
メリット:足りない血流を十分に補うことが出来る。
デメリット:皮膚の血の巡りが悪くなることから切ったところが治らず追加の治療を要することがあります。
左上:バイパス手術。裏の目盛りが1mmなので血管は2mm前後
右上:バイパス手術が終了したところ
左下:術後3DCTアンジオ:バイパスが確認されます
右下:術後3DCTアンジオ:骨をくぐってバイパスが入っています
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