高齢の脊髄損傷も幹細胞で治る

Enhanced Functional Recovery from Spinal Cord Injury in Aged Mice after Stem Cell Transplantation through HGF Induction.
Takano M, Kawabata S, Shibata S, Yasuda A, Nori S, Tsuji O, Nagoshi N, Iwanami A, Ebise H, Horiuchi K, Okano H, Nakamura M.
Stem Cell Reports. 2017 Mar 14;8(3):509-518.

Abstract
高齢者の脊髄損傷は回復が悪いと考えられているが、動物実験は若い動物が多く不明である。今回高齢と若年マウスの脊損に神経幹細胞(NSC)を移植したところ高齢は傷害は大きかったが、回復は同じで細胞生着はむしろ良かった。またそれに関与する因子としてHGFが重要だと分かった。

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細胞を移植しないと高齢の脊髄損傷動物は若い動物より回復が悪いが、細胞を移植すると高齢でも若い動物と同じくらいまで運動機能が改善している。

Introduction
近年高齢の脊損が増えてきていて治療法の確立が求められている。細胞移植が効果があることが分かってきているが、若年動物で実験されることが多く高齢は一般的に神経の回復性が下がるため効果が得られるか不明である。今回高齢マウス脊損モデルに神経幹細胞を投与し回復を若年と比較し、その効果機序を検討した。

Methods
2ヶ月と15ヶ月マウスにT9損傷
GFP陽性神経幹細胞を損傷部位中心に直接投与
運動改善率(BMSスコアとTreadmil)・死亡率・損傷サイズ・残存神経数を評価
9日後の遺伝子発現をPCA法とGEPA法で検討
HGFの効果は抗体を使ってブロックした。

Results
高齢脊損モデルの機能改善は若いモデルより悪かったが、HGFmRNA発現が亢進していた。幹細胞を移植すると年寄りモデルで細胞生存率↑、評価項目は老若同く改善し、移植細胞はシナプス形成などに関与していた。一方線維芽細胞移植では改善無かった。HGFをブロックすると回復が消されてしまった。

<川堀の感想>
ただ損傷しただけでは高齢動物の回復は悪いが、高齢でも幹細胞移植によって若い動物と同じくらいまで回復しうることが面白い。またその理由として脊髄内に存在するHGFが関与することが分かった。そうであれば細胞移植+HGF投与は更に良いかもしれないと思われた。幹細胞研究で改善→原因究明の遺伝子検索→発見→原因を除くと効果が無くなるという実験メソッドが素晴らしい