虚血MSC由来EVは血管新生能力が高く、miR126-3p/140-5pなどが高発現している

Small extracellular vesicles obtained from hypoxic mesenchymal stromal cells have unique characteristics that promote cerebral angiogenesis, brain remodeling and neurological recovery after focal cerebral ischemia in mice
Jonas Gregorius, Chen Wang, Oumaima Stambouli, Tanja Hussner, Yachao Qi, Tobias Tertel, Verena Börger, Ayan Mohamud Yusuf, Nina Hagemann, Dongpei Yin, Robin Dittrich, Yanis Mouloud, Fabian D. Mairinger, Fouzi El Magraoui, Aurel Popa-Wagner, Christoph Kleinschnitz, Thorsten R. Doeppner, Matthias Gunzer, Helmut E. Meyer, Bernd Giebel & Dirk M. Hermann
Basic Research in Cardiology (2021) 116:40 

Abstract
低酸素(1%)で培養したヒト骨髄MSCの上清から採取したエクソソーム(EV)は通常酸素培養EVと比較し、含有するmiRNAとタンパク質に違い(miR126-3p/140-5p↑、miR186-5p↓)があり、ヒト血管内皮細胞と脳梗塞マウスにおいて新生血管能力が高かった。また好中球除去すると効果が無くなり、関与が考えられた

Figureの説明>
虚血MSC由来EVは50ug/ml前後で最も血管内皮増殖が良くなる(MTTアッセイ)
血管をFITC入りコラーゲンを入れて血管新生を評価。虚血MSC由来EVでは新生血管が増えていたが、白血球をLy6Gで除去すると効果が無くなった 

Introduction
MSC由来EVは組織回復を促進するが、MSC本体に比べ癌化のリスクが低い事や滅菌が容易など臨床に向いている点が多く期待されている。低酸素負荷を加えたMSC由来EVHIF-1a等を介して効果がアップすると報告されているが、脳血管でも同様の効果があるかについて調べた。

Methods
ヒト骨髄液由来MSC48時間通常酸素or1%酸素で培養(DMEM10%PL)し、EVをポリエチレングリコール6000凝集→超遠心で回収。EVの効果をIn-vitro(ヒト内皮細胞を用いTranswel/チューブ形成/MTT assay)In-Vivothread modelに経静脈投与200万個MSCから出たEV1,3,5日目にIVし、血管新生を評価)で検証。EV内容物をNanostring miRNA発現アッセイ、液体クロマトグラフィーで評価

Results
内皮細胞は虚血MSC由来EV50ug/mlで有意に増殖・移動・チューブ作製亢進。ラットでも運動機能・血管新生・神経細胞死抑制が虚血MSC由来EVで改善。通常酸素MSC由来EVに比較し、内容物にはmiRNA126-3p, 140-5pMMP2、コラーゲンチェーンが上昇し、186-5pが減少していた。ただ効果は白血球除去によって失われた。

<川堀の感想>
エクソソームは非常に夢のある治療法だと思う。その中で虚血MSC由来細胞の方が血管を作り出す能力が高いEVを生み出しているのは概ね理解可能でき、今後の発展が楽しみ。ただ用量依存性ではなく、途中から育ちが悪くなるなど適切な投与量がある事をしって少し驚いた。血管新生に白血球が必要だという事であったが詳細は載ってなく、今後の検討が必要だと思われた