好中球が損傷組織に浸潤するには3つの機序が関係している

Intravascular Danger Signals Guide Neutrophils to Sites of Sterile Inflammation
Braedon McDonald, Keir Pittman, Gustavo B Menezes, Simon A Hirota, Ingrid Slaba, Christopher C M Waterhouse, Paul L Beck, Daniel A Muruve, Paul Kubes
Science. 2010 Oct 15;330(6002):362-6.

Abstract
白血球(好中球)は炎症部位に集積し治癒に関与するが、過剰な集積は組織障害も引き起こす。肝臓で無菌性炎症に好中球の集積をin-vivo imagingで検討した。好中球は、①損傷細胞から出たATPが(クッパ―細胞の?)Nlrp3を活性化し血管周囲に集められ、②血管内皮細胞から出る炎症サイトカインが血管内に導き、③Formylタンパクが壊死組織に導く、という3つの機序が存在する事が分かった。

Figureの説明>
AB:損傷後数時間で損傷部位(赤)に白血球(緑)が集積する。CD:特に集積は血管を介して集まってくる。

3つの機序のシェーマ

 Introduction
脳梗塞などの無菌性炎症の際に好中球が組織に浸潤してくる。これはゴミの除去という働きがある反面、過剰な浸潤は新たな組織破壊をもたらすという負の側面もある。組織が障害されるとDNAなどのDAMPsが放出され、好中球が呼び寄せられるが、今回それに関わる細胞の関与順番や放出物等の機序についてIn-vivo imagingで調べてみた

Methods
実に多くのノックアウトマウス・抗体などを使用していた。特に参考になったのは血中macrophageを排除するのにliposome-encapsulated clodronateが用いられていた事。

Results
マウス肝臓熱凝固ネクローシスモデルを作製し、spinning disk confocal intravital microscopyを用いて生体内の好中球の動きを観察した。損傷から30-60分で好中球(LysozymeGFPを発現)が損傷部位に血管を通じて集まってきた。それは3つの機序があって、①好中球の損傷周囲集合:細胞から出たATPがクッパ―細胞(MΦ)のP2X7Rに結合して炎症物質Nlrp3を発現し、それが血管内皮細胞?のIL1Rに結合しICAM1の発現を上昇させていた。また好中球サイドのインテグリン(Mac1)もここに関与していた。②好中球の組織内浸潤:クッパ―細胞が出すと考えられるMyd88によって血管内皮細胞?のMφ炎症タンパクMIP2CXCL2)が発現するが、発現は損傷部位より少し離れた150umところからはじまって以後減衰していた。白血球のCXCR2MIP2を関知して血管内を通過した。③損傷部位に入るには好中球表面のFRP1レセプターが関係していた。

<川堀の感想>
非常に多くの実験を行っていて、理解するのが難解であった。白血球が損傷組織に入るには細胞からのATPが組織内マクロファージを活性化し、血管内皮上にICAMを出現させる機序、組織内マクロファージがMIP2を濃度勾配をもって発現し、それに対して白血球表面のCXCR2が引き寄せられる機序、ネクローシスから出るタンパクが壊死部分に呼び込む機序の3つが存在することを初めて知った。白血球制御は炎症の一番最初と考えられ、ここを制御できれば脳卒中の軽傷化が得られると思った。